窒素,リンとその化合物

【窒素とリンの単体】 

窒素NとリンPはともに15族に属す非金属元素である。価電子(最外殻電子)数が  〔 5 〕個であり,イオンになりにくく,他の原子との結合は一般に〔 共有結合 〕になる。窒素N2は無色・無臭の気体で,空気の体積の約〔 80 〕%を占める。工業的は,液体空気の分留によって得られる。

リンの単体には同素体が存在する。その1つである〔 黄リン 〕はP4で示される分子で淡黄色のロウ状の固体で,発火点が低く(約60℃),〔 水中 〕で保存する。また,猛毒である。一方,〔 赤リン 〕はPnで示される巨大分子である。暗赤色の粉末で,発火点は約260℃と安定で,無毒である。赤リンはマッチ箱の側薬の成分である。黄リンは〔 二硫化炭素CS2 〕に溶解するが,赤リンはCS2に溶解しない。

 

N2沸点-196℃)とO2(沸点183)の沸点の差を利用して分ける。

 

硝酸の性質】

硝酸HNO3は酸化作用が強く,イオン化傾向が水素よりも小さいCuAgを溶かしニ酸化窒素や一酸化窒素を発生するAlFeは濃硝酸には〔 不動態 〕を形成するので溶けない。濃硝酸と濃塩酸を体積比1:3で混合した溶液を〔 王水 〕といい,白金や金も溶かす。硝酸は工業的に〔 オストワルト 〕法によって製造される。実験室的には硝酸塩に濃硫酸を作用させる。その他,硝酸は無色の発煙性の高い液体で,光により分解するので,〔  〕色の瓶に入れ,冷暗所で保管する。 

 

① 濃硝酸 〔 Cu + 4HNO3 → Cu(NO3)2 + 2NO2 + 2H2O  〕 

〔 Ag + 2HNO3 → AgNO3 + NO2 + H2O    〕 

(無機化学の反応式 パターン6 CuAgと濃硝酸 ⇒ その金属の硝酸塩+NO2+α)

 

 希硝酸 〔 3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4H2O  〕 

〔 3Ag + 4HNO3 → 3AgNO3 + NO + 2H2O   〕 

(無機化学の反応式 パターン6 CuAgと希硝酸 ⇒ その金属の硝酸塩+NO+α)

② NONO2

 

③ オストワルト法

 1NH3と空気の混合物を,加熱した白金(触媒)に触れさせて,NOを作る。
  〔 4NH3 + 5O2 → 4NO + 6H2O 〕 

 2NOを空気に触れさせて,NO2とする。〔 2NO + O2 → 2NO2        

 3NO2を水に溶かしてHNO3を作る。〔 3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO 〕 NOが出ることがポイント  

 1)~3)の反応をひとまとめにする。〔 NH3 + 2O2 → HNO3 + H2O 〕  3)→ 2)→ 1)の順でたす

                             

④ 〔 NaNO3 + H2SO4 → NaHSO4 + HNO3 〕

濃硫酸の不揮発性を利用した反応。濃硫酸は不揮発性の液体で,その他の塩酸HClや硝酸HNO3は揮発性がある酸である。揮発性の酸の塩に濃硫酸を作用させると,ClNO3Hと結合し,酸となって揮発して遊離する。 
                                           

⑤ 4HNO3 → 4NO2 + 2H2O + O2 
 

【アンモニアの性質】 

アンモニアNH3は〔 刺激 〕臭のある無色の空気よりも軽い気体で,水に非常に良く溶け,弱塩基性を示す。実験室では,塩化アンモニウムNH4Clに強塩基を作用せせる。工業的には〔 ハーバー・ボッシュ法 〕により,高温・高圧状態で水素と窒素を直接反応させる濃塩酸を近づけると塩化アンモニウムNH4Clの白煙を生じる(アンモニアの検出法)。 

① 〔 NH3 + H2O ⇄ NH4 + OH 〕

② 〔 2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O + 2NH3 〕

(無機化学の反応式 パターン9 弱塩基の塩と強塩基 ⇒ 弱塩基と強塩基の塩)

③ 〔 N2 + 3H2 → 2NH3 〕 触媒:四酸化三鉄Fe3O4 

④ 〔 NH3 + HCl → NH4Cl 〕

NH4Clは固体なので,気体どうしが反応して固体ができるので白煙になる。NH3HClどちらの検出にもなる。

【リンの化合物】 
 五酸化二リンP4O10は十酸化四リンともいい,白色粉末で,〔 潮解 〕性があり,吸湿性が強く乾燥剤や脱水剤として用いられる。リン酸H3PO4は〔 潮解 〕性のある固体で,水に溶けて酸性を示す。五酸化二リンP4O10を水に溶かして煮沸するとリン酸ができる 
 

① 〔 P4O10 + 6H2O → 4H3PO4 〕 酸性:塩酸>リン酸>酢酸